亀水の地に村人の心の拠り所として、数百年来守り続けてこられた「亀水のお薬師さん」が「亀水の説教所」に発展し、更に昭和十七年には「紅峰山興願寺」として生まれ変わり、昭和二十八年に至って先々代正潤法師の発願の許、地区の皆様の懇念により、現在の立派な本堂がこの地に建立されました。
その由来を訪ねれば、「亀水の祖先の方々の信仰心が『興』隆正法の『願』いとなり、子々孫々までこの地にお念仏の花を咲かせるために『興願寺』と寺号を公称した」と初代住職より伝え聞いております。浅学非才の私が興願寺住職として今日のあることは、地元の皆様の一方ならぬご指導とご尽力のお陰と、衷心より感謝いたします。そのご恩に報いる道は、念仏の輪がますます広まるよう、地区における教化の道場として活動することが、私に課せられた使命と覚悟し、歩んで参りました。
私たちの世界は、出会いと別れ、喜びと悲しみ、人間関係の崩壊による孤独、老いと病など、複雑に絡み合った問題が次々と襲ってきます。こうした問題に、あなたは「まだまだ大丈夫」と頑張ってはいますが、心は既に限界にきているのではないでしょうか。そして突然、心が壊れ、悲鳴をあげるのです。そうなる前に、少しだけ心を開いてみてはいかがですか。
どんなに孤独に苛まれたとしても、「一人ではないんだよ」「いつも一緒だよ」とやさしく寄り添って下さる仏さまに気付かされる場所があるのです。それが興願寺です。
永い歳月の間にその都度幾度か村人の手によって支えられ、歴史を刻んでこの地に現存しております。このことは祖先の信仰の深さと、民風の豊かさを物語るものと思います。これを受けて後世に生きる私達、祖先の遺産を守りつぎ、之を後の世に伝え行くことが私達の使命であるように思うのであります。