蹲踞

suikinkutsu

蹲踞とは

日本庭園の添景物の一つで露地(茶庭)に設置され、茶室に入る前に、手を清めるために置かれた背の低い手水鉢に役石をおいて趣を加えたものです。手水で手を洗うとき「つくばう(しゃがむ)」ことからその名があります。

tsukubai
蹲踞は、「水鉢」を中心に、手水を使うために乗る「前石(まえいし)」、 夜の茶会の際に手燭を置くための「手燭石(てしょくいし)」、寒中に暖かい湯の入った桶を出すための「湯桶石(ゆおけいし)」、以上の役石で構成されます。
前石は飛石よりもやや大ぶりのものを用い、かつ少し高めに据えます。なお、手燭石と湯桶石の左右は、茶道の流派によって異なります。興願寺の場合は「表千家」の手前です。
これらの役石に囲まれた部分は「海」と呼ばれ、水鉢からこぼれる水を受けるために低くし、砂利やゴロタ石などを敷きつめます。
水鉢を海の向こう側に据える形式を「向う鉢」(興願寺の場合は向う鉢)、海の中に据える形式を「中鉢」と呼びます。
一般的に自然石の水鉢は向う鉢とし、見立てもの、あるいは創作ものの水鉢は中鉢とすることが多いです。
写真左の「水汲石」は貴人に対して臣下のものが柄杓に水を汲んで差し出すために足をおくための石です。

 

 
この蹲踞の下に水琴窟があります。
水琴窟とは、縁先に置かれた手水鉢や庭先の蹲踞(つくばい)から溢れた水、またそれらで手を清めた後の水を利用して、庭園に“微妙な音”を響かせる日本独自の風流な仕掛けをいいます。“微妙な音”とは少し金属的な音で、琴の音に似ていることから水琴窟と呼ばれ 、庭師が瓶(かめ)に落ちる水滴の音を聴き、その響きが良いことに気づいたことから産まれました。

水琴窟造りは、庭園に密かに音を響かせる庭師の楽しみとなったことから秘伝になったといいます。風や水の音を楽しむという日本の文化的背景もあり、水琴窟は後世の庭師に高度な造園技法として伝承され、明治から大正、昭和初期まで全国各地で造られましたが、戦争の激化と共に造る人も無くなり、戦後は全く忘れられた存在となってしまいました。
微妙な澄んだ音を聴いていると心安らぐものがあることや、匠の技を後世に伝えることからも、近年見直されています。

 

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